国語の講師をしていますと、授業として扱う教材の中で続きが読みたくなる興味深い出題文に出会うことが多くあります。
この作品もその一つでした。
そして読んでみると教材の短い文章だけでは味わえぬ充足感がありました。
昇平と草太という二人の少年(幼児?4歳から始まります)が29歳になるまでを描く教養小説です。つまり、登場人物が色々な出来事を通じて成長していく物語なのですが、これが楽しい。成長していく過程を追いながら、当時の自分を振り返らせてくれます。
時には共感しながら、時には、「いやいや、ちょっと待て」とツッコミを入れながら、久々に本に入り込んだ感覚になりました。
扱う題材も自転車ということで、宇都宮にいると身近なのではないでしょうか。宇都宮では毎年、世界の名だたる選手が参加するロードレース、JAPAN CUPが森林公園で開催されています。
また、同じ自転車でも、ロードレースとは求められる能力が全く違う競輪もあります。なにより、ほとんどの人が乗ったことがある自転車です。この身近な自転車を軸に成長していく二人の軌跡が書かれています。
個人的な読後感としては、終わってしまったという感じでした。
29歳で終わらず、もっと先々まで成長した姿を読みたいと感じました。
(その後調べると、その後が書かれている作品があったので、今後読みたいと思います。)
ページ数は少なくはありませんが、軽い感じで読み進められるかと思います。
これも、自転車ならではの疾走感を感じるように著者が趣向を凝らしたのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、とても充足感の味わえる作品でした。