この記事の先生
みなさんこんにちは!
今回は、1冊の本について書きたいと思います。
ある日、何気なくテレビを見ていた時のことです。あの「今でしょ!」で一躍有名になった林修先生がある学者さんを紹介していました。
その学者さんは中室牧子さんと仰います。
中室先生は現在慶應義塾大学総合政策学部の准教授で、専門は教育経済学。教育を経済学の理論や手法を用いて分析されているそうです。私が一番興味を持ったのは、教育をあらゆるデータによって分析しているところでした。
たしかに教育に携わる人たちは、それぞれが教育者としての個人の経験に基づいて意見を述べることが多いでしょう。よって、大規模なデータなどを用いた科学的な根拠などが無いと言われてしまえばそうかもしれません。
そこで、先生の理論を詳しく知るために先生の著書である<「学力」の経済学>を読んでみました。
すると子供の「学力」を伸ばすためのいろいろな手法や理論がデータとともに書いてありました。そこで今回は、その著書の中からいくつか先生の紹介されている“理論”をご紹介しながら、それぞれについて私なりのコメントを添えていきたいと思います。
【1】他人の子育て成功体験を真似しても自分の子供もうまくいく保証はない
例えば、子供の成績に悩む親が子供を全員東大に入れた親の体験記を買ったり、子育てに成功したお母さんに話を聞きに行くといったりしたことをとかく多く耳にするが、それをただ真似しても自分の子供も成功するとは限らないというのです。
そこで大切なことは、成功した“原因と結果”すなわち因果関係を明らかにすることが最も重要だというのです。
これは私も同感です。人は十人十色です。他人と同じ勉強法・同じ教材、そして同じ塾などただ真似をするだけでは伸びるものも伸びなくなってしまうでしょう。
ただ、そうは言っても私も成功体験記などはよく読みます。それは、その中に私がまだ気づいていない“子育てのヒント”が隠されていることがあるからです。今後出会うであろう子供たちに合った最適な育て方ができるよう日々勉強は欠かせません。
【2】子供を勉強させるためにご褒美で釣るのは間違いではない
ただし、本当に子どもの学力を上げたいのなら「テストでよい点を取ったら」とか「通知表が上がったら」など遠い将来に与えるのではなく「本を一冊読んだら」とか「宿題を終えたら」など近い将来に対してご褒美をあげるようにするとよいそうです。
これについては、意見が分かれるところでしょう。ただ、ご褒美が結果に対して与えられるのではなくプロセスに対して与えられるのは賛成です。私自身常に子供たちに、テストの点数や順位を気にするのではなく、そこに至るまでに何をしたか?または何ができていなかったか?を大切にするように教えています。
つまりテストでよい点が取れるというのは単なる結果であって、私たちが求めている日々の学習というのは“「勉強の仕方」の勉強”で、将来の大きな目標を達成するために最も大切なことだと思うからです。これを読んで私自身今まで以上に塾生にご褒美をあげようと思っているところです。
【3】子どもをほめるときは、もともとの能力でなく、具体的に達成した内容を挙げることが重要
例えば子供がテストでよい点を取ってきたときに「頭がいいね」と言うのと「よく頑張ったね」と言うのとではどちらが効果的かということです。
これはコロンビア大学のミューラー教授の実験結果に基づいて書かれていますが「頭がいいね」と言われた子供たちはよい点が取れた時は「自分には才能があるからだ」と考え、悪い成績を取ったときは「自分には才能がないからだ」と結果にだけこだわるようになったということです。
一方「よく頑張ったね」と言われた子供たちは以後のテストでも粘り強く問題を解こうとし続け、たとえ悪い点を取っても「努力が足りないせいだ」と考えるようになったということです。「あなたはやればできるのよ」ではなく「今日は2時間も勉強できたね」など具体的に子どもが達成した内容を挙げてほめてあげることが重要だそうです。
これは私も反省しました。ついつい問題が解けたことに目が行きがちだったので今後はなるべく宿題を多くやってきたことや集中して授業が受けられたことなど具体的な内容をなるべく挙げてほめるようにしたいと思います。できれば、それぞれに合ったご褒美なども検討したいと思います。
【4】お手軽なものに効果はない
例えば、家庭での学習で「勉強しなさい」と言うのは効果がない。それよりも、親が自分の時間を犠牲にして「勉強を見守る」などはかなり効果があるのだそうです。また、男の子には父親が、女の子には母親がかかわるとよいそうです。
ただ、そんなに手間暇をかけられる親はなかなかいないので、親以外でも学校や塾、家庭教師の先生などの力を借りるのも一つの方法であるとも書かれています。
これに対して私は、男の子には父親が・・・というところに強く共感します。というのも、これは奇しくも林先生もおっしゃっていましたが、最近の男子学生に「文字が薄くて読めない」とか「声が小さすぎて何が言いたいのか伝わらない」とかが増えているそうです。
私自身も年々男の子の心の成長の遅れをとても心配しています。母親による男の子への過干渉は決して良い結果をもたらさないと考えています。
【5】その他
その他、次のようなことも書かれていましたが、これらについては別の機会に詳しくお話ししたいと思います。
・教育にはできるだけ小さいころからお金をかけるとよい
・非認知能力(特に学力にとって重要な「自制心」と「やり抜く力」)の重要性
・小さいうちから「しつけ」を受けた人は将来年収が高くなる
・単にテレビやゲームをやめさせても学習時間はほとんど増えない
・テストの点数を上げるために部活や生徒会などをやめさせることは慎重であるべき
以上、中室先生の著書から私が興味を持った事柄について簡単に述べさせていただきました。興味のある方はお読みになってみることをお勧めします。
これがベストというものは今までも、そしてこれからも存在しないと私は考えています。というのも、一人ひとりの子供たちはすべて違った環境で育ち、たとえ同じ親に育てられた兄弟・姉妹であってもそれぞれ個性が違って育つことも当然で、だからこそ、そんな子供たちと接する私たちがそれを受け止められるだけの能力を備えていなければならないと考えるからです。
さらに言えば、時代とともに子供たちも日々変化を続けるので、私たちは常にそういったことに対応できるよういろいろな情報を入手する必要があるのです。
子どもたちにだけ「勉強しなさい」と言うのではなく、私たち大人も勉強しなくてはなりませんね。
ともに頑張りましょう。
鈴木 克美
栃木県宇都宮市
個別指導学習塾 受験舎
JUKENSHA