この記事の先生
「失敗しない塾選び」目次
今回は学力編①となります。
⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂⁂
学力を伸ばすために
真の学力とは
結論から言いますと、「単にテストのためだけに勉強を重ねても真の学力は上がらない。」と私は考えます。
そもそも「学力とは?」という問いに対する答えは数多くあります。評論家の数だけ答えがあるといっても過言ではないくらいです。それほど「学力」という概念はあいまいなのです。
これについて詳しい話は、また別の機会で説明させていただくとして、今回私が言う「学力」とはいわゆる「受験学力」に限定してお話しをさせていただきます。
学力を伸ばす方法は
「学力が伸びるって?」という問いにみなさんはどのようにお答えになりますか?もちろんここで言う「学力」とは「受験学力」を言いますので、単に「成績が上がること」という答えが最も多いと思います。
しかしこの「成績を上げる」という、いたって単純なことが、実は意外と難しく、たぶん、どの親御さんも苦労されているのではないかと思います。
そこで、ここからは「成績を上げる」具体的な方法をいくつかご紹介します。
伸びる勉強法
「成績を上げる」ために一番手っ取り早い方法は、時間をかけて勉強することです。よほどピントはずれの勉強をしない限り、点数は上がるでしょう。
こんなことは誰でも知っていることで、いまさら私に言われるまでもないとお思いでしょうが、実はここに大きな盲点があるのです。というのは、この勉強の仕方によって、その後のお子さんの「成績の伸び」を大きく左右することになってしまう可能性があるからです。
これについて興味深い話がありますのでご紹介させていただきます。
これは首都圏のとある有名進学塾(日本でも特に有名な私立・国立中学校への合格にかけては三本の指に入る)の講師の方から聞いた話で、あるときその塾の卒業生の中でも特に優秀なクラス(仮に栃木県にいれば、県のトップレベルになるような小学生)を追跡調査したところ、高校卒業後希望通りの大学に進学できたのは50%弱、しかも約10%強の生徒は大学すら行けなかったそうです。
この子供たちは、それこそ小学校の低学年から必死の思いで中学受験に向けてがんばり、見事中学合格をはたしたエリートです。
塾側も合格できるよう、受験テクニックはもちろんあらゆる受験教育を施しました。それなのに、6年後、これほどまでに結果に差がでてしまったというのです。
また、それに対して栃木県内の公立中学校からどこの塾にも通わずに、言わば独学で、都内の最も難関と言われる私立高校に合格し、現在東大に通っている生徒を私は知っています。
この二つの事例をご覧になって皆さんはどう思われるでしょうか?
単に「もともと能力が違うからだよ」と片付けてしまってよいでしょうか?
ではいったい、ここで言う「能力」とは何なのでしょう?親からもらったDNAだけでは片付けられない何かがそこにはあると私は思います。
そこで、この「能力」について私が教師時代からクラスの生徒たち等に毎年してきた話がありますのでここでご紹介します。
『コップの話』
“人間はみな同じ大きさの見えないコップを持って生まれてきます。
例えば、今ここに水が100ml入るコップがあったとします。そこに150mlの水を入れるとどうなるでしょう?そうです、こぼれてしまいますね。では、こぼれないようにするにはどうしたらよいと思いますか?
そうですね、コップをもっと大きなものに代えればこぼれませんね。実はみなさんが生まれながらに持っているコップも、みなさんしだいで今後どんな大きさにも代わるのです。
最初は小さかったコップが将来は太平洋にもなれば、逆に生まれた時よりも小さくなってしまうことだってあるのです。
そして私は、このコップを「人の器」と呼んでいます。よく、大人の人が「あの人は心が広い」とか「あの人は人間がでかい」などと言っているのを耳にしたことがあるでしょう。まさにあれが「見えないコップ」つまり「人の器」なのです。
では、みなさんのコップをさらに大きなものに代えるためにはどうしたらよいと思いますか?それは、みなさんがこれからの人生の中でより多くの経験をすることです。良い経験だけではなく、時には悪い経験、例えば失恋なども必要です。
身体的にあるいは精神的に、楽しい思いも、つらい思いもする必要があります。つまりみなさんが今後の人生において、結果を恐れず、何事にも積極的に、好奇心をもって取り組むことが、みなさんの「コップ」つまり「器」を大きくしてくれるのです。”
こんな話をよくしたものです。
たしかに生まれながらに非凡な「能力」を持っている子もいるとは思いますが、他のほとんどの子供たちは、その後の鍛え方でいかようにでもなると思うのです。
勉強法に限って言えば、
・学校の授業を大切にする
・基礎基本を大切にする(むやみに応用問題、特に難問に挑戦しない。もし挑戦したいという時は決して受験テクニックだけで解こうとせず、面倒でも数通りの解き方で解いてみる)
・声を出して読む(音読)癖をつける
・書くことを嫌がらないようにする
・答えを出すことよりも、その途中経過を大切にする
・途中経過はできるだけ書き残しておく(書いた図やひっ算などを消さない)
・問題を解く際に常に「なぜ?」と思うようにする
・決して詰め込み学習をしない
・自ら競争心を持って勉強するのは良いが、周り(特に親や先生)からプレッシャーをかけられての勉強をしない
・目先の点数にこだわらない(自分の将来を見通した勉強をする)これは特に大切!!
など、主なものを挙げてみました。
ここに挙げたものを見て「おやっ」と思われた方もいらっしゃると思いますが、たしかにこれらは、即点数には結びつきにくいものばかりです。
しかし、もともと全国的に見ても学力の高くない栃木県の子供たちを、将来、希望する進路に導くためには、比較的学力の高い大都市の子供たちと同じことをさせていたのでは無理が生じると私は思うのです。
事実、小中学生の時は全国レベルだった生徒が高校に入ってどんどんレベルダウンしていく様を私はたくさん見てきました。
それに対して、小中学生の頃はいたって普通にのびのび育った子供が、高校に入りめきめき伸びて、最終的に希望する大学に合格できたという教え子も少なくないのです。
もちろん、勉強法は十人十色、全てが当てはまるわけではありません。しかし、ただやみくもに勉強するのではなく、しっかりとした柱を持って勉強することが後々後悔せずにすむ一番の近道ではないでしょうか。
~学力編②~(9月1日号)へ続く
鈴木 克美