vol.6 モモ

ミヒャエル・エンデ 作
大島かおり 訳

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折にふれて読み返す本のひとつです。

はじめて読んだ小学3年生の頃は、とにかく言葉がきれいで大好きでした。
主人公のモモは、円形劇場の遺跡に一人で住んでいる女の子。

序盤では、彼女と友人たちの心豊かな日々の暮らしへ読者も招待されます。しかし、言葉巧みに人間の時間を奪いとって時間銀行なるものに貯蓄させる灰色の男たちが登場し、モモの友人をジワジワとからめ取っていくにつれ、物語は緊張をはらんで静かにうねりだします。

「モモ」は童話や児童文学というジャンルに入りますが、そんな分類は無意味かもしれません。
くりかえし読めるのは、読むたびに新しい問いや魅力が立ち現われるからで、探偵小説といってもいいし、哲学書といってもいい。この物語から投げかけられる問いとは、たとえば、時間とはなにか?価値ってなにか?お金ってなにか?死ってなに?心って?悩んだ時、物語ではなく、具体的な現実を手っとりばやく分解して理解を助けてくれる本が必要な事もあります。

成長するにつれて、そうした機会は増えるかもしれません。
しかし、玉石混交の現実に直面する前に、物語の中で美しい言葉に彩られた「見立て」の原型をたくわえておくと、普段は目に見えない様々な現実の「骨格」を自力で見出す手助けになります。それは、すぐに役立つ具体策は教えてくれませんが、悩みの根本にある、自分と世界のつながりかたを洞察する力を養ってくれるのではないでしょうか。