vol.30 ほんまにオレはアホやろか

文庫: 248ページ

出版社: 新潮社 (2002/07)

発売日: 2002/07

この記事の先生

加納 麻菜実 先生

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どのくらい昔だったでしょうか。テレビで「ゲゲゲの鬼太郎」や「のんのんばあとオレ」を見ていたのを思い出します。

今回紹介する本は、それらの原作者である水木しげるさんの自伝です。

筆者の少年時代から、青年期、戦争を経て、鬼太郎が有名になるまでの体験が書かれています。

私にとっては衝撃的な内容でした。

戦争のため南の島に送られ、そこでマラリアにかかったり、いつ自分の命を失ってもおかしくないような状況を経験したり、戦後も自分の作品がなかなか安定して売れずに、出版社に作品を持ち込んでも帰りの電車賃がないといった状況だったり・・・あたりまえのことですが、今の自分の生活とあまりにも違いすぎて、どの場面を読んでも驚きがありました。

ほんの数十年前の日本の状況を、筆者の目を通して知ることができます。

戦争だったり、貧しさだったり、私ではとても想像がつかないほどの困難を筆者は経験しているはずなのに、筆者の体験を読んでいて、なぜか苦しい気持ちにならない。

それは筆者のゆったりした性格のためでしょうか。

『人がどうこうしたからとか、スタートにおくれたからといって、クヨクヨする必要はない(あとがきより)』と筆者は言います。

また、筆者はあとがきで『…人間つまらんことでも骨をおっていれば、やはり、天の報いみたいなことが、あるような気がする。』と語っています。

他人から見たら、おかしなように思えることでも、自分が興味を持ったものに熱意をそそぎ、それを信じて続けていけば、いつの日かそれが生きがいになり、自分の生活を支えるものになるということでしょうか。

妖怪に熱中して、それを仕事にしてしまった筆者にそう語られると、とても説得力があります。

それと同時に、なんだか勇気みたいなものをもらった気がします。

きっと今の努力が未来の自分に返ってくる。

それを信じて、今、目の前にあることをがんばろうと思えた1冊でした。