vol.20 ビロードのうさぎ

マージェリィ・W・ビアンコ/原作
酒井駒子/絵・抄訳

この記事の先生

加納 麻菜実 先生

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幼いときに大切にしていたうさぎのぬいぐるみがありました。くたくたになるほど毎日かわいがっていましたが、いつの日からか、一緒に遊ばなくなっていました。今でも大切なものに変わりないのですが、当時のように遊ぶことはありません。

『ビロードのうさぎ』は、本当にこころから大切にされたうさぎのぬいぐるみのお話です。子ども部屋の魔法によって、本当にこころから大切にされたおもちゃは、本当のものになれるという言い伝えがあります。その魔法は、おもちゃが子どもとお別れしなければならなくなったときに起こるといいます。

子どもにとって必要でなくなったとき、おもちゃは子どもの手から離れていってしまします。昔、よく遊んだおもちゃの存在をふと思い出すとき、懐かしい気持ちと同時に、今は必要なくなってしまったのだというどこか寂しい気持ちを感じます。

しかし、そのような気持ちになるのは、当時そのおもちゃをほんとうに大切にしていた証なのかもしれません。自分が大切にしていた、今ではくたくたのうさぎのぬいぐるみを見ると、子ども部屋の魔法が私の部屋でも起こりえたのではないかと思ってしまいます。

『ビロードのうさぎ』は、大切なものをよりいっそう愛おしく感じさせる一冊です。