vol.17 「八十日間世界一周」

ジュール・ヴェルヌ 作
鈴木啓二 訳
岩波文庫

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藤田 賢二 先生

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「私は八〇日ないしそれ以内で、すなわち一九二〇時間で、十一万五二〇〇分で、世界を一周する。誰であれそれに異を建てる者に対して、私は二万ポンドを賭けよう。この申し出を飲まれますか。」

ロンドンの若き資産家フィリアス・フォッグは、トランプ仲間とこんな賭けをする。時は一八七二年。まだ、飛行機もインターネットも存在していない時代。彼は旅を続ける。アフリカからインド、東南アジア、中国、そして明治時代の日本へと。行く手に待ち受ける冒険とロマンス。彼は八〇日で世界を一周できるのか?冒険活劇の金字塔と呼べる、古典作品の傑作です。

現代の社会は情報化が進み、地球上から未開の地は完全に消滅してしまったと言っても過言ではないでしょう。遠く離れた国の様子でさえも、テレビやインターネットを通して簡単に知ることができるようになりました。日本にいながら、サバナの夕暮れやアンデスの空を見ることができる。それは素晴らしいことなのでしょう。しかし、それは私たちが心をときめかすような、新しい発見をすることを難しくしているのもまた事実です。絶え間なく続く日常、そんなマンネリを打破したくて、人々は旅に出るのかもしれません。知らない街の駅に着いたとき、外国の空港に到着したとき、私たちは得も言われぬ高揚感と、子どもに戻ったような不安を感じることができます。そして、そんなタイプの刺激は、私たちが日常で積もらせた退屈をリセットし、新たな活力を与えてくれるのです。

この本を読むことで、私たちはフィリップ・フォッグと共に、一九世紀の世界を旅することができます。私たちが全く経験したことがない世界。その景色を想像する時、私たちはある感覚を持つことでしょう。それは、子どもの頃、隣街まで冒険した時に感じた興奮、初めて見る景色に覚えた感動。あなたが、もし日常に退屈を感じているのなら、彼と共に旅に出てみましょう。